平社員の人材育成では仕事の現場で必要な知識やスキルを身につける「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」に主眼が置かれます。もちろん仕事の現場でさまざまな経験をすることで、それなりに成長することはできます。しかし近年は「このやり方だけでは、人間力を学ぶことができないのでは…」という意見が多くなってきました。その結果、人材育成の分野では「OJD(オン・ザ・ジョブ・ディベロップメント)」への切り替えがさかんに行われているのです。OJDは和製英語で、仕事を通しての能力開発を意味します。ではOJDに主眼を置くためには、人材育成研修で平社員にどのようなことを教えればよいのでしょうか。
社員の能力や性格は十人十色で、ひとりひとり違います。一律的な接し方では、決してうまくいきません。相手の能力や個性に応じて接し方を変える必要があります。たとえば同じことを話したのに相手が理解できない、もしくは話したとおりに行動できないという場合、それは相手に問題があるのではなく、自分の話し方に問題がある可能性が高いです。研修ではこの事実を伝えたうえで、仕事では常に相手に合った話し方を心掛けなければならないことをレクチャーしましょう。
平社員といえども入社して数年経てば、何人かの後輩ができるものです。先輩の立場になった平社員のなかには、自分のレベルで仕事を教え、いきなり自分のレベルまで相手を引き上げていこうとする人がいます。これは後輩への指導ではなく、自分のやり方を押し付けているに過ぎません。教えたのにそのレベルまで達しないから「この後輩はヤル気がない」と捉えていては、人間力など身につきません。後輩のレベルがどの程度で、どのような話し方をすればいいのかを考えることが大切な心構えであることを研修で教えましょう。
また先輩社員は後輩社員より、すべてにおいて優れていなければならないということはありません。大事なのは相手のためにアドバイスをする、一緒に考える、場合によっては相手に教えてもらうという心構えも重要です。この心構えを身につけるには相手の長所に目を向け、その持ち味や適性を引き出そうとする姿勢が求められます。
人材育成研修というのは、人間力を学ぼうという雰囲気がその場にあるか否かで、受講者の理解度は違ってきます。人材育成研修の場で人間力を学ぶ雰囲気をどのようにして醸成していくか、その土壌づくりは講師にとっての重要な役割だといえます。