役職をもらう立場になったら

部下に無関心であってはいけない

ビジネスの世界では「部下のスキルを把握せずして、役職者の仕事はできない」といわれています。どういう材木が与えられているかを把握せずに家を建てる大工はいませんし、エンジンの性能を把握していないスポーツカーに乗ってレースに参加するF1ドライバーもいませんよね。同様に、部下のスキルを把握していない段階では、役職者の仕事を適切に遂行することができないのです。年に数回の面談の場だけでなく、役職者は折に触れて自分の部下にどういうスキルがあり、どんな人物なのかを知ろうとする努力をしなければなりません。 役職者を対象とした人材育成研修では、労務管理を重視しがちですが、まずは部下のスキルを把握することの重要性を伝えたうえで、部下の心を開かせる人間力を学ばせることが推奨されます。人間力を学ばせる人材育成研修では、役職者の部下の関係性についてレクチャーしましょう。部下は役職者にいろいろなことを知られるのを嫌がるという風潮があります。しかしこの嫌がるという態度のなかには、恥ずかしがるというニュアンスも含まれています。部下は表面上は嫌そうな態度を見せながらも、本音の部分では役職者に関心を持ってもらうことを喜ぶ傾向があるのです。

部下への関心が自身の人間力を高める

役職者から関心を持たれることを喜ぶ傾向には理由があります。大部分の人間には承認欲求というものがあり、特に上司との関係では自分は認められたいという心理が働くのです。SNSで「いいね!」の数を競う時代背景が、若者の承認欲求を強くさせたといわれています。そのため役職者が部下にまったく関心を持たないでいると、その部下が飛躍する可能性は低くなってしまいます。「落ちこぼれ社員は、上司の無関心から生まれる」という言葉もあるほどです。 もちろん部下には、役職者に知られたくない部分もあるでしょう。その部分を強引に知ろうとするのは、好ましいことではありません。たとえば有給休暇を申請してきた部下に休暇の過ごし方を聞いて、答えづらそうにしているのにしつこく聞くことなどです。しかしそれ以外の部分にアプローチすることでも、部下の心を開かせることはできます。部下との関係をプライバシーというワードでひとくくりにして、無関心でいるのは役職者の職務放棄です。プライバシーを口実にせず、部下ひとりひとりのスキルや個性を把握できるのが、人間力のある役職者だといえます。人材育成研修では、部下に関心を持つことがめぐりめぐって役職者自身の人間力を高めることにつながることもレクチャーしましょう。